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未来を支える読書 未来を支える読書
私の心を惹きつけてやまない図書館

「東京図書館制覇!」管理人 竹内 庸子 

 

 私は東京の図書館巡りをしており、東京23区の公立図書館は全て訪れました。ここ十年ほどの図書館の動きを見ていると、こども図書館の新設やユニークなイベントなど、児童向けサービスが年々充実しているのを感じます。そんな素敵な図書館をいくつか紹介したいと思います。

 

<こども図書館>

 渋谷区立笹塚こども図書館は、学童施設を図書館へと改修した施設です。小部屋に分かれた建物を活かして、絵本がいっぱいの「もりのへや」、読み物が並ぶ「きょうりゅうのへや」、照明を消すと天井に星がきらめく「ほしのへや」と3つの空間に分かれており、このなかで物語を読んでいると宇宙や太古の世界へと空想が膨らみます。

 実験や観察を通じた学び体験を楽しめる江戸川区子ども未来館には、江戸川区立篠崎子ども図書館が設置されています。絵本や物語もありますが、いきものや宇宙に関するものなど、ちしきの本が多いのが特徴です。こども未来館の講座と図書館を活用することで、本の世界と自分の体験を繋げることができます。

 いたばしボローニャ絵本館は、統廃合して使われなくなった小学校の教室に、世界各国の原書絵本を集めた図書館です。貸出はできませんが、国・地域別に分類された開架の棚から、自由に絵本を手に取ることができます。日本でもよく知られているキャラクターが登場する欧米絵本から、見慣れない文字が躍るアジア・アフリカの絵本まで、棚に並ぶ原書は実にさまざま。物語の内容や絵のタッチはもちろん、紙の材質にも各国の文化が現れており、世界の広さを実感します。

 

<図書館のイベント>

 図書館の子ども向けイベントでは「ぬいぐるみお泊まり会」が全国で広まっています。子どもたちからぬいぐるみを預かり、夜の図書館を楽しむ様子を撮影して、ぬいぐるみを戻すときにその写真をプレゼントするという企画で、子どもにとっては自分の分身が図書館にお泊りしたかのよう。

 もう一つの人気ある図書館企画が「本の福袋」。テーマに沿った本数冊を袋に入れて中身が見えないようにし、利用者は袋に書かれたキーワードやヒントをもとに袋を選んで借ります。中身は開けてのお楽しみ。子ども向けの福袋は、対象年齢がわかるようにしていることが多いです。自分で本を選んでいると、好きなジャンルに偏りがちですが、こうした企画を通じて未知の本と出会えます。

 最後にご紹介したいのが、子どもの行動力から生まれた「ダイタンの読書検定」。世田谷区立代田図書館が改築工事のため長期休館している間の仮事務所[※注] で行っている企画で、物語を読めば解ける三択問題を、もともとは図書館員が作って配布していました。すると、常連利用者の少年が自主的に問題を作って図書館にもってきてくれて、今では利用者の作った問題を配布する企画へと発展しています。この経緯を知ったとき、自分から積極的に図書館と関わって楽しむ術を子どもから教わった気分になりました。
[※注:仮事務所は平成26年3月20日で終了、平成26年4月7日からは新しい代田図書館がリニューアル開館]

 

<図書館の魅力>

 以上、ユニークな施設やイベントをご紹介してきましたが、図書館の楽しさの根底は、家とは比べものにならないほどたくさんの本を手にとって読めるという、その空間自体にあると思います。私が図書館を回るなかで見る好きな光景の一つに、小さな図書室の限られたテーブルで、子どもも大人も一緒になってそれぞれの本に没頭している姿があります。本の世界に浸る楽しさのもとでは、子どもも大人も平等だと感じられ、これこそが本の力だと思います。

 また、先日図書館に行ったときは、小さな子どもが親御さんの力を借りずに一人で本を棚に戻した後、「一人でできたよ」という誇らしげな顔で私に笑いかけてくれました。子どもたちは、図書館を通じて、公共の決まりごとを学んでいきます。

 読書だけでなく、本の世界に囲まれた空間や、皆と一緒の読書体験をも楽しめる図書館は、私の心を惹きつけてやみません。

 

竹内庸子氏プロフィール

東京の図書館を巡るサイト「東京図書館制覇!」管理人。平成17年から東京の図書館巡りをはじめ、23区の公立図書館のレポートをサイトに掲載。現在は、図書館巡りの範囲を多摩地域へも広げると同時に、23区の図書館のユニークな活動を取材して紹介している。