第四次東京都子供読書活動推進計画の策定に関わって
学習院大学文学部教授 秋田喜代美
文部科学省では、2018(平成30)年3月に第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」(概要)を公表しました。それに続いて東京都教育委員会でも、2021(令和3)年3月に第四次東京都子供読書活動推進計画を公表しました。
私も策定に関わらせていただきましたが、今回改訂の大きな柱は「発達段階に合わせた取組」に基づく計画というところにあります。これまでに行われてきた様々な調査結果からわかっている主な点は3点あります。第1に、乳児期に絵本を自治体等で手渡された保護者は、絵本と子どもの出会いに関心を持つ場合が多いこと、第2に、乳幼児期に絵本の読み聞かせをしてもらった子どもは、小学生になってから一人で読書をしようとする行動につながること、そして第3に、読書習慣を小中学生になるまでにつけておくことが、その後生涯にわたって本を読もうとする意欲や技能の獲得につながることです。
高校以後の不読者層は、忙しくて読む時間がその時に取れないという層と、読む技能が身についていない層に分かれます。だからこそ、義務教育の段階までに、学校や家庭、地域で本にふれる経験が大切となります。
このため、東京都の第四次計画では、特別な配慮を必要とする子どもの読書活動の推進も含め、すべての子どもたちが本にふれる機会を保障できるよう、各市区町村における取組の推進を支援する内容となっています。読書の量だけではなく、読む本の質の向上や、子ども自らが主体的に関わる態度の育成も意識し、また実際に誰が手にとってもわかりやすい事例も参考資料としています。
忘れられない本との出会い体験は、子どもたちにとって、豊かな未来へと続く希望と喜びを生む大きなプレゼントとなります。本を通して、子どもの笑顔あふれるつながりを、学校や地域において取り組んで行きたいと思います。
秋田喜代美(あきたきよみ)氏プロフィール
学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授。
NPOブックスタート活動立ち上げや、国の第四次子ども読書推進計画策定や読書に関する調査研究に携わる。文字・活字文化推進機構評議員、新宿区こども読書活動推進会議座長、絵本専門士委員会委員。
編著に『絵本で子育て 子どもの育ちを見つめる心理学』(岩崎書店社、2009年)、『読む心・書く心 文章の心理学入門』(北大路書房、2002年)、『読書の発達過程 読書に関わる認知的要因・社会的要因の心理学的検討』(風間書房、1997年)などがある。