国立教育政策研究所 有元 秀文
ブッククラブとは何か
ブッククラブとはもともと大人が数人の仲間と同じ本を読んで会話を楽しむものです。本について話し合うことでより深く本を楽しみお互いがわかりあえます。最近のアメリカでたいへん流行していますが、このブッククラブを国語の授業に取り入れたのです。
教科書を使った授業は子どもの興味とかけ離れることが多く自由さにかけます。しかし子どもが自分の好みやレベルに合わせて選んだ本は子どものやる気を引き出します。知らず知らずにたくさんの本を読み、深く理解し自分の意見が発信できるようになります。
どうやってブッククラブをやるか
エリック・カールの「はらぺこ あおむし」を例にして簡単なやりかたを示します。
詳しいやりかたは「ブッククラブひろば」http://www12.plala.or.jp/bookclub/index.htmlをごらんいただくと、いろいろな学年に使えるたくさんの実例がのっています。
基本的なやり方は、まず音読しながら質問していきます。それからビッグクエスチョン(大きな問)について紙に書かせます。書いたものをもとに話しあいます。
・まず表紙をみせましょう。「これは何の絵だろう?見たことあるかな?」と聞いて、予備知識を確かめ興味を持たせます。「どんなお話だと思う?」と予測させます。これは正解を求めているのではなく、考えたり想像する力を育てようとしているのです。
・「ちっぽけなあおむしはたべものを見つけるかな?」と予測させてわくわくさせます。
「お日様はどんな顔をしている?あおむしになんか言ってるのかな?」と考えさせます。
・「月曜日にりんごを食べたあおむしは次に何を食べるだろう?」と絵を見せて考えさせます。「火曜日にどうしてなしを二つも食べたんだろう?」と理由を考えさせます。
・「水曜日は何をいくつ食べるだろう?」と予測させます。「どうしてあおむしはこんなにおなかがへっているのかな?」と原因を考えさせます。
こうして与えられた絵本の情報を根拠にしてこれから起こることを予測する力と、「おなかがへっている」という結果からその原因を推測する力を育てます。この予測する力と原因を推測する力はどの教科でも必要な思考力なのです。
「土曜日にいろいろなものを食べたあおむしはどうなるでしょう?」と予測させます。「あなたも同じようなことをしたことはない?」と自分の問題として考えさせます。「おなかが痛いとき、どうしたらいいんだろう?」と解決策を考えさせます。「みどりのはっぱを食べたらどうしておなかが治ったのだろう?」「どうしてはらぺこじゃなくなったの?」といつも理由や原因を探求する習慣をつけましょう。
ビッグクエスチョンは、「あおむしがきれいなちょうちょになったとき、どう思った?」「どうしてこんなにきれいになったんだろう?」「このお話で一番心に残っているところはどこ?」「一番好きなところはどこ?」「このお話の続きを作ってみよう」などの中から一つ選びます。大きな子どもは書かせてから発言させるとしっかりした表現ができます。
もう一度読ませて頭に入れさせてから絵本を見ないで子どもにお話をさせてもよいのです。一番好きな場面を絵に描かせてもよいのです。楽しみながら考えて表現する力が育ちます。そして一番大切な読む事への意欲が知らず知らず育つのです。
有元秀文氏 プロフィール
昭和46年4月東京都立新宿高等学校教諭(国語科)、昭和61年4月文化庁文化部国語課国語調査官、平成3年国立教育研究所教科教育研究部主任研究官を経て、平成13年1月から現在まで国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官。
著書
○『PISAに対応できる「国際的な読解力」を育てる新しい読書教育の方法-アニマシオンからブッククラブへ-』(少年写真新聞社 2009年)
○『子どもの読解力がぐんぐんのびる!戦争と平和の名作をクリティカルに読み解く』(合同出版社,2009年)
○『「PISA型読解力」の弱点を克服する「ブッククラブ」入門-多読とディスカッションで、楽しくクリティカル・リーディングを育てる-』(明治図書,2009年)
○『ブッククラブで楽しく学ぶクリティカル・リーディング入門 -国際化社会を生き抜く読書力がだれでも身につく-』(ナカニシヤ出版,2009年)
○『ブッククラブ・メソッドで国語力が驚くほど伸びる』(合同出版,2011年)
ほか多数。