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未来を支える読書 未来を支える読書
学校でこそ、本好きな子を育てたい

学校図書館アドバイザー 五十嵐絹子 

 

 どのようにして読書好きな子どもが育ち、どんな環境だと本嫌いになってしまうのでしょうか。子どもの読書について、どの学校でも共通して見られる傾向がありました。それは、本好きな子どもが大勢育っている学級と、本を読みたがらない子が圧倒的に多い学級があることでした。学年が進むにつれてそれは顕著になってきます。

 

本好きな子・本嫌いな子が育つ環境

では、本好きな子を育てている学級担任の先生がどのような指導をしているのか、本嫌いな子が育つ学級との違いの例を上げてみます。一人の先生がこの全部をというのではなくても、いくつかをしています。

① 担任が「読みきかせ」や「聞く読書(読む読書に対して)」を折々している。

② 先生が子どもの本を読んでいる。

③ 朝読書のときには担任も読書をしている。

④ 子どもたちに「図書館に行く」「本を借りる」ことをいつも促し習慣化させている。

⑤ 授業などで、よく本についての話題を出す。本の紹介もする。

⑥ 読書単元では努めて関連図書や同じ作者の本などの並行読書をさせている。

⑦ 本を読む時間をできるだけ確保している。朝読書・隙間時間の読書・家庭読書など読む機会を意識的につくり促している。

⑧ 調べ学習などで図書館を活用し、本を利用した学習を工夫して取り組んでいる。

⑨ 不読傾向の子どもに声をかけ、本に親しめるように個別に働きかけている。

⑩ 子どもが読んでいる本に関心を持ち、読書する子を褒めることがある。

 ここに上げた例は、そんなに難しい特別のことをしている訳ではなく、ごく当たり前なことのような気がします。

では、本嫌いな子が育っている学級の例はどうでしょうか。

① 担任が本を読むことは学習以外のことだと考え、読みきかせなどはしない。

② 先生が子どもの本を読まない。読書が好きでないか読書習慣がない。読む暇がない。読書をあまり大事と思っていない。

③ 子どもたちが図書館に行ったり本を借りたりすることを積極的に薦めない。借りる時間もあまり保障しない。(担任が望んでいないことに子どもは敏感)

④ 授業に図書館をめったに活用しない。図書館に親しむ指導が無いかあるいは少ない。

 

 子どもたちを図書館から遠ざけ、本に親しむ働きかけをしないだけで子どもたちは簡単

に読書が苦手な子どもに育つことが見えてきました。

 

学校における「読書指南役」

 新学習指導要領では、言語活動の重視という観点で全ての教科で図書館を活用し、図書の利用が重要になっています。教育課程の中に読書教育が位置づけられたのです。

 読書は、指導することによって自立した読み手が育ちます。放置しておいては、本離れを避けることはできません。読書は教育として行われる必要があります。本好きな子に育つかどうかは先生次第と言っても過言ではありません。

 「読みきかせ」の例を上げれば、担任の先生が読みきかせをすることで一層インパクトが強く、子どもと本の世界を共有するいい関係が生まれます。学級づくりにも効果的です。特別支援を要する子どもたちに、授業の始めに読みきかせをすると集中力が促されスムーズに学習に入れるし学習力が高まると一石二鳥どころか三鳥の「読書効果」を活かしている先生もいます。本は優れた教材です。読みきかせは、効果抜群の指導手法です。こんなすごい「読みきかせ」を保護者や地域の方に任せておくだけでなく、教師自身が教育活動の一つとして取り組んでほしいわけがまだまだあるのです。

 今こそ、学校で教育の一貫として本好きな子どもを育てる必要があります。しかし、子どもの本に馴染まない先生もいるかもしれません。読書指導を図書館担当者が請け負って完結するのではなく、司書教諭、学校司書、図書館担当教諭による教員サポート・読書指南が大切です。教育課程と図書館活用を結びつけるための本の情報を伝えるなど全教師への「読書指南」こそ、本好きな子どもを育てるキーポイントです。

 

 

 

五十嵐絹子氏プロフィール

・昭和41年より、山形県鶴岡市の専門・専任・正規の学校司書として鶴岡市内小学校5校、中学校2校に勤務。平成15年に学校図書館大賞を受賞した朝暘第一小学校には、平成7年より平成19年まで12年間勤務。同校の図書館活用教育のかなめとして図書館活動を支えた。定年退職後、鶴岡市教育委員会、図書館支援業務員として、3年間鶴岡市内の学校図書館支援にあたった。 ・現在はフリーで「学校図書館アドバイザー」として学校図書館の応援をしている。 ◆現在の役職等

 

「山形県PTA連合会 親子読書推進委員」山形県PTA連合会 「日本子どもの本研究会会員」「子どもの読書を支える会 運営委員」

◆主な著書

○『学校図書館から教育を変える~学校司書たちの開拓記~』(共著・国土社 2012.3) ○『図書館へ行こう 図書館クイズⅡ』(五十嵐絹子編著・国土社 2011.3)

○『学校図書館ビフォー・アフター物語』(五十嵐絹子編著・国土社 2009.7)

○DVD映像版『学校図書館ビフォー・アフター物語』(五十嵐絹子編著・京都日向工房2009.12)

○『子どもが本好きになる瞬間(とき)』 (五十嵐絹子著・国土社 2008.2)

○『夢を追い続けた「学校司書」の四十年』 (五十嵐絹子著・国土社 2006.7) ほか多数